米粉の製粉方法と工程を解説|製法の違いがパンやお菓子の仕上がりを決める

「同じ米粉なのに、商品によってパンの膨らみやお菓子の食感がまるで違う」。

そんな経験はありませんか?その差を生む大きな要因が、製粉方法と工程です。米粉の製粉方法は乾式と湿式に大別され、粉砕方式には気流粉砕・ロール粉砕・胴づき粉砕があります。製法によって粒度やデンプン損傷度が変わり、仕上がりを左右します。

この記事では、洗米から乾燥までの製粉工程、国が定める用途別基準、家庭での米粉選びへの活かし方までやさしく解説します。読み終えるころには、パッケージの情報から用途に合う米粉を見分けられるようになるはずです。

米粉の製粉方法は「乾式」と「湿式」の2つに大別される

米粉の製粉方法は「乾式」と「湿式」の2つに大別される

米粉の製粉方法は、大きく分けると「乾式製粉」と「湿式製粉」の2種類です。違いはシンプルで、お米を水に浸してから砕くかどうかという点にあります。

乾式製粉は、精米した白米をそのまま粉砕する方法です。工程が少なくコストを抑えやすい一方、硬いお米をそのまま砕くため、粉の粒はやや粗めになります。

湿式製粉は、お米を水に浸して柔らかくしてから粉砕する方法です。手間はかかりますが、きめ細かく、デンプンの傷みが少ない米粉に仕上がります。パンやケーキ用の微細な米粉は、主にこの湿式で作られています。

ここで登場した「デンプンの傷み」は、米粉の品質を語るうえで欠かせないキーワードです。専門的には「デンプン損傷度」と呼ばれ、粉砕のときにデンプンの粒がどれだけ壊れたかを表します。損傷が多い米粉は水を吸いすぎてしまい、パンが膨らまない、生地がべたつくといった失敗につながりやすくなります。

農林水産省の資料では、乾式製粉のデンプン損傷度は一般に10%前後とされています。一方、湿式製粉で気流粉砕を使った場合は5%以下に抑えられます(出典:農林水産省「製粉技術から見た米粉の特性」)。同じお米から作っても、製法でこれだけの差が出るわけです。

2つの製法の違いを表にまとめると、次のようになります。

項目乾式製粉湿式製粉
工程白米をそのまま粉砕浸漬・テンパリングを経て粉砕
粒の細かさやや粗め(平均100μm程度)微細(気流粉砕なら30〜60μm)
デンプン損傷多め(一般に10%前後)少ない(5%以下も可能)
コスト抑えやすい手間の分だけ高くなりやすい
向く用途料理のとろみ付け、揚げ衣などパン、ケーキ、麺など

どちらが優れているという話ではありません。料理の衣に使うなら、乾式の米粉でも十分おいしく仕上がります。一方、米粉パンのようにきめ細かさが命のレシピでは、湿式製粉の微細な米粉を選ぶと失敗が大きく減ります。

米粉ができるまでの製粉工程5ステップ

米粉ができるまでの製粉工程5ステップ

それでは、品質の高い米粉づくりの主流である湿式製粉を例に、工程を順番に見ていきましょう。大きく5つのステップに分かれます。なお、乾式製粉の場合はステップ2と3の吸水工程を省き、精米したお米をそのまま粉砕する流れになります。

ステップ1:原料米の受け入れと異物除去

まず原料のお米を受け入れ、石抜き機などで小石や異物を取り除きます。米粉は加熱前の粉のまま流通するため、最初の異物除去はとても大切な工程です。

ステップ2:洗米・浸漬

お米を洗って表面の糠を落とし、水に浸けて吸水させます。お米は小麦よりもはるかに硬い穀物のため、そのままでは細かく砕けません。水分をおよそ13%から30%近くまで高めることで、内部が柔らかくなり、砕きやすい状態になります。

ステップ3:テンパリング(寝かし)

水を切ったあと、15〜60分ほどお米を寝かせて、水分を粒の内部まで均一に行き渡らせます。この「テンパリング」の時間設定こそ、各メーカーのノウハウが光る部分です。短いと芯が硬いまま砕かれて粒度が揃わず、長すぎると風味が抜けてしまいます。

ステップ4:粉砕・ふるい分け

水分を含んだお米を粉砕機にかけ、ふるいで粒度を揃えます。粗砕き用と仕上げ用で複数の機械を組み合わせることもあり、どの粉砕機を使うかで米粉の個性が決まります。粉砕機の種類は次の章で詳しく紹介します。

ステップ5:乾燥・検査・包装

粉砕後は水分を13%程度まで乾燥させ、保存に適した状態に整えます。水分が多いとカビの原因になり、少なすぎると生地になじみにくくなるため、ここも品質に直結する工程です。最後に磁力選別による金属除去と品質検査を経て、袋詰めされて出荷されます。

こうして見ると、「お米を砕く」だけに見えた米粉づくりが、実は水分管理の連続だとわかります。吸水させて、寝かせて、砕いて、また乾かす。この往復にひと袋分の手間が詰まっています。

粉砕機の種類で米粉の性質が変わる

同じ湿式製粉でも、粉砕機の方式によって出来上がる米粉の粒度や損傷度は変わります。代表的な3方式を表で整理しました。

粉砕方式仕組み粉の特徴主な用途
気流粉砕高速の気流で米同士や鋼板に衝突させて砕く粒径30〜60μmと微細で、デンプン損傷が少ない米粉パン、洋菓子、麺
ロール粉砕速度の異なる2本のロールの間に通して砕く大量生産向きで、やや粗めの粉が得意上新粉、和菓子
胴づき粉砕(スタンプミル)臼に入れた米を杵でついて砕く風味や色を残しやすい伝統製法上用粉など和菓子用

パンやケーキ向けの微細米粉で主流なのは気流粉砕です。摩擦熱を抑えながら細かく砕けるため、損傷の少ないきめ細かな粉に仕上がります。一方、お団子や柏餅に使う上新粉は、ロール粉砕や胴づき粉砕で作られる粗めの粉が向いています。

つまり「どの製法が一番良いか」ではなく、「作りたいものに合う製法はどれか」という関係にあります。和菓子には和菓子の、パンにはパンの最適解があります。

国の「用途別基準」を知ると米粉選びが変わる

製法の違いがわかっても、店頭で袋を見ただけでは製粉方式まで書かれていないことがほとんどです。そこで頼りになるのが、国が公表している「米粉の用途別基準」です。

この基準では、米粉を用途ごとに1番(菓子・料理用)、2番(パン用)、3番(麺用)に分類しています。粒度やデンプン損傷度などの基準を満たした商品が、用途の番号を表記する仕組みです(出典:農林水産省「米粉の用途別基準」平成29年公表)。

項目1番:菓子・料理用2番:パン用3番:麺用
粒度75μm以下が50%以上同左同左
デンプン損傷度10%未満10%未満10%未満
アミロース含有率20%未満15%以上25%未満20%以上
水分含有率10%以上15%未満同左同左

注目したいのは、粒度と損傷度がすべての用途で共通な一方、「アミロース含有率」で用途が分かれている点です。アミロースはデンプンの成分のひとつで、少ないほどもっちり、多いほど歯切れよく仕上がります。パン用の2番が中間域なのは、膨らみと食感のバランスを取るためです。

店頭やネットで米粉を選ぶときは、まずパッケージに「1番」「2番」などの用途表記があるかを確認してみてください。表記がない商品でも、「パン用」「製菓用」といった用途表示や「微細粉」の記載が選ぶ手がかりになります。

たとえば、米粉パンを焼きたいなら「2番」またはパン用表記のある微細米粉、クッキーやシフォンケーキなら「1番」または製菓用を選びます。唐揚げの衣やとろみ付けに使うなら、粒度にこだわらなくても十分です。用途と粉を合わせるだけで、仕上がりの安定感は大きく変わります。

私たちWonderful Riceが安曇野で向き合っている米粉も、こうした基準を意識して選んだパン・お菓子向きの微細タイプです。基準の見方がわかると、産地やメーカーごとの個性を比較したうえで選べるようになります。

製粉技術はいまも進化している

米粉が「パンもケーキも作れる粉」になったのは、微細製粉技術が実用化された2000年代以降のことです。かつての米粉は上新粉のように粒が粗く、小麦粉の代わりにはなりにくい食材でした。

転機を作った例のひとつが新潟県です。県の食品研究センターが中心となり、微細製粉技術の研究を重ねてきました。お米の外周に細かいヒビを入れてから気流粉砕する「二段階製粉」。酵素で細胞組織を柔らかくしてから砕く「酵素処理製粉」。いずれもデンプン損傷を抑えたまま微細化できる技術で、米粉パンの広がりを支えています(出典:新潟県「米粉製粉技術の御紹介」)。

家庭のオーブンで米粉のシフォンケーキを焼けるようになった背景には、こうした製粉現場の積み重ねがあります。ひと袋の米粉の向こう側には、農家と製粉メーカーの仕事が連なっています。

米粉の製粉方法にまつわるよくある質問

最後に、製粉方法と工程についてよくある疑問をまとめました。

Q1. 家庭のミルサーやミキサーで米粉は作れますか?

作れますが、市販品と同じ仕上がりにはなりません。家庭用の機械は乾式粉砕にあたるため、粒が粗くなり、デンプン損傷も大きくなりがちです。お団子や料理のとろみ付けなら楽しめますが、パンやケーキには市販の微細米粉を使うほうが安心です。手作りする場合は、お米を一晩吸水させてよく乾かしてから砕くと、少しきめが整います。

Q2. 商品の製粉方法はどこで確認できますか?

パッケージに製粉方式まで書かれている商品は多くありません。確認したい場合は、メーカーの公式サイトの商品ページやQ&Aを見るのが近道です。「気流粉砕」「微細粉砕」といった記載があればパン・菓子向き、と読み取れます。記載が見つからなければ、「パン用」「製菓用」の用途表示を目安にしましょう。

Q3. 上新粉やもち粉と「米粉」は何が違うのですか?

どれもお米の粉なので、広い意味ではすべて米粉の仲間です。上新粉はうるち米、もち粉や白玉粉はもち米が原料で、主に和菓子向けの粒度で作られています。一方、最近「米粉」として売られている商品の多くは、パンや洋菓子向けに微細に製粉されたうるち米の粉です。同じ名前でも粒度が大きく異なるため、レシピで指定された種類の粉を使うのが失敗しないコツです。

Q4. デンプン損傷度は自分で確かめられますか?

数値としては測れませんが、簡単な目安はあります。米粉に同量の水を混ぜたとき、さらっとした生地になれば損傷が少なく、もったりと粘る場合は損傷が多めのサインです。手持ちの米粉の個性を知っておくと、レシピの水分量を調整する際の判断材料になります。

米粉を選ぶ際は製法を確認しよう

台所にある米粉の袋を裏返すと、「製菓用」「パン用」といった用途表示や、粒度・原料米の記載が見つかります。これまで読み飛ばしていた情報が、粉の性格を教えてくれる手がかりに変わっているはずです。

米粉レシピでの失敗の多くは、粉と用途のミスマッチで起きています。乾式か湿式か。どの粉砕方式か。どの用途基準に合うか。この3つの視点があれば、売り場で迷ったときも、レシピがうまくいかなかったときも、立ち返る場所ができます。

製法と工程の知識は、一度身につければずっと使える米粉選びの物差しになります。次の米粉を選ぶ際に、この視点を活かしてみてください。

Wonderful-Rice編集部

Wonderful Rice編集部は、「米粉をもっと身近に」という思いから生まれた米粉専門メディアです。レシピを中心に、市場動向や商品情報、生産者の声などを通じて、米粉の多様な魅力を発信しています。

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